プロジェクト

山菜・きのこの流通

採集期になると、月山の深いブナ林が僕の仕事場になります。例年10月上旬にはマイタケ、ノキウチ(エゾハリタケ)、カノカ(ブナハリタケ)が出始め、採集シーズンが始まります。ほどなくモダシ、ヤマドリ(クリタケ)、早生ナメコ、ヒラタケ、ムキタケが採れるようになって黄葉いよいよ深みを増し、やがて奥ナメコやエノキダケが終わるころ、山は静かに白く閉ざされます。長い冬を経て大雪が少しづつ融けだすと、萌え上がるまばゆい緑。ゼンマイ、ヤマウド、オオバギボウシなどの山菜が次々と立ち現れ、いよいよ月山筍が採れる頃まで、採集者たちは残雪を追うようにして山の奥へ、奥へと分け入ってゆくのです。

季節をめぐるごとに、自然と向き合うことの理解を深めました。ゼンマイ一つとってみても、来年も収穫を期待できるように雄株は残し、雌株も株立ちから数本残して、根を痛めないよう上から限られた長さだけを採らなくてはならない、というような明文化されない“ルール”があるのです。

月山の四季折々の山菜やきのこはは、その味、触感、大きさ、どれをとっても最高級と太鼓判が押されています。それらの流通を通じて、日知舎は月山の魅力的な食材を届けるとともに、失われつつある山の仕事と文化を継承していきたいと考えています。

ある土地に時間をかけて培われた暗黙知のようなもの、自然と人の関わりの全体性のようなもの。それを継承するために、手仕事をつくり、流通を行っています。

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